「誰がアパレルを殺すのか」の本も話題になり、アパレル業界の不振が騒がれている。それに伴い百貨店業界の長い不振も注目を浴びている。
ファッション商品においての一番の特徴は販売期間が短いことだ。商品やブランドによっても違うが、おおむね3ヶ月といったところだろうか。3ヶ月たつと、値引き販売、いわゆるセールにしないと売れなくなってしまう。
一番いいのは、3ヶ月で完売する量だけを仕入れる、生産することだが、どうしても、リアル店舗での品揃えとしては商品の幅や奥行きが必要であり、単に売る商品だけでなく、見せる商品、味付ける商品も必要になってくる。
売れていた時代は、良かったが、今のように売れない時代は、どうしても在庫という壁ができてしまう。バブル崩壊後、踏ん張ったアパレル企業の多くが、業績が良くなってきたにもかかわらず、倒産していった。要因は在庫。在庫は在ると倉庫の“庫”と書くが、罪の子供と書いてザイコと読ますのもこのためだ。間単に言えば、100万売るのに150万の商品を用意するか、300万の商品を用意するかで、利益率が大きく違ってくる。売上より多くの商品を用意すればするほど、CFの悪化で倒産に結びついてしまう。当然、消化率が良いに越したことは無いが、良い品揃えという考えと矛盾してしまう。
ファッションの世界でもECサイトの勢いは上がってきている。本来、試着ができないことや素材感が分からないことからファッションでのECサイトは難しいと考えられてきた。しかしZOZOタウン運営する株式会社スタートトゥデイの前期の売上高は750億円で前比140%強である。これは手数料売上が中心である為、実際の商品売買額は2,000憶以上と言われている。越境ECという言葉があるように、世界中で同じ商品が買えるようになってきたことも一因していると思う。その最大手は「Farfetch 」。そして、Farfetchは在庫を持たず、倉庫も構えていない先端の流通・在庫システムを構築している。
日本企業で変わったところでは、エアークロゼットという会社がある。ここは、月額製のレンタルビデオみたいなもので好きな洋服を決まった着数だけ何着でもレンタルできるというサービスを展開している。また、ファクトリエというメイドインジャパンを前面に打ち出したサイトがある。リアル店舗は、熊本の本店を含め4店舗だけ。ここは店頭で商品を試着するだけで、買うのはネット。店舗で買う場合はタブレットで注文して、自宅に配送される。ここで、おもしろいのは台湾に進出した時は、台湾のツタヤの一角にサンプルを置き、販売はネット、日本と同じ手法を用いたことだ。
今後は、発想を変え、消費者の事を考えた販売でないと売上確保は難しいだろう。メーカーに在庫リスクを押し付ける百貨店、そしてそのメーカーは在庫リスクを価格に反映させるような旧態依然の売り方をしていては、自然と消費者は離れていくだろう。